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00.9.26

石鹸箱で作った鉱石ラジオ

歯車の詰め合わせ

00.10.1

トナカイの角

空から突き刺さり

静止

00.10.3

着飾ったオオアリクイ

一列に並んで花嫁を待つ

00.10.6

牛若丸

コウモリの耳から耳へと

綱渡り

00.10.10

夜になると

海が窓まで来ているらしい

ちいさなヨットの

コツンという音

00.10.6

牛若丸

コウモリの

耳から耳へと

綱渡り

00.10.12

西荻窪の八百屋さん

ちいさな男の子がおじいさんと買い物だ

がんばれかわいいぞ、と思う

くじらもライブだ、と思う

00.10.15

あの日まっ黒な石を

闇に投げた君よ

その石のかたちを

忘れることができたか?

00.10.18

星の中に埋められた

もうひとつの星

その星の回転が偏西風を生み

歌を育てる

00.11.01

先生

鉛筆ロケットが

真っ赤な炎を吐きながら

裏山に落ちてゆく

消防車じゃ!

00.10.25

鉛筆ロケットが

月のおもてに文字を書く

その音に

耳を澄ませ、生徒諸君

00.10.23

風邪をひくと

もう一人の自分が

出ていこうとする

自分は二重の像になって

ブレてしまう

00.11.06

お聞きなさい

わたくし達の鉱石ラジオが

ほんとうのことを告げている

夜の森は幻

鉛筆ロケットは

未だ月のおもてにあると

00.11.09

それなら先生

先生だって幻だ

鉛筆ロケットとお月様は

あんまり遠くてよくわからない

森の炎がふくらんだぞ

00.11.12

(鉛筆ロケットの独白)

人間どもよ

君たちは私を創ったが

私のことを何も知らない

私が月の表にどんな文字を書いたか

わかるかね?

00.11.22

最後の狼には四つの目がある

この世にはないものを

見るためだ

と、父は教えた

00.11.12

幻の炎に追われて

最後の狼が向こう側へ飛んだ

細い絹糸が

空を流れ始めた

00.11.18

校庭で輪になった

生徒達

森の炎が頬を照らす

最後の狼を呼び戻すつもりだ

00.11.25

その父も

四つの眼の狼を見ることなく

電球王国の

影となった

00.11.29

生徒達の輪の中に

ひとつの影が生まれている

それは狼か父か

それとも

00.12.01

影は女のかたちになった

わたしはこの国の母

森の炎に身をゆだね

たくさんの影を産み落としてきた

00.12.05

あなた達の狼

シカを喰い殺し

森を守り

時をらせんのかたちに保ってきた

00.12.06

と、その時

女の影を喰い破り

絹糸

空へ吹きあがる

00.12.10

これより先

誰が時のらせんを守るのか

鉛筆ロケットは月のおもてに

そう書きしるした

00.12.18

少年よ

君はちいさな音楽が

いくつもからみ合うらせん

赤と

青と

黄色の玉の

楽しい合奏

道に迷ったときには

自分の歌に

耳を澄ませ

00.12.15

少年A

先生、ぼくにはわからない

先生も月も狼もロケットも

ぼくにはちっともわからない

00.12.12

3台の消防車には

花の男、カラスの男、ネオンの男

それぞれ笛、太鼓、鳴り響かせて

燃える森の中へ

00.12.29

さあ、そろそろ出発の時です

いいえ

先生は行きません

新しい世紀はあの森のむこうです

00.12.26

鉱石ラジオが青く発光し

音楽が始まった

言葉は細く、銀色に

ギターの弦となってふるえ始めた

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